現在は様々な保険商品が利用可能になっています。その中には、弁護士保険という商品もあります。
弁護士を利用することはないので、自分には関係ない保険だと考える方も多いかもしれません。
しかし弁護士への相談が必要になるケースは意外に多いのです。弁護士保険の補償内容やメリットについて紹介をします。
目次
弁護士保険|訴訟費用や相談費用に備える
弁護士保険とは、法律関係のトラブルや各種訴訟関連の事案が出てきた時の弁護士への費用負担を補償する目的の保険です。
弁護士に法律関連のトラブルや訴訟の依頼をした際には、かなりの高額費用が発生します。
不当な仕打ちに対して、弁護士を介して対抗したいと思っても、弁護士利用にかかる費用が高額すぎて結局何もできなかった、そのような経験をした方もいるかもしれません。
弁護士保険に加入しておけば、弁護士利用にかかる費用について心配することなく相談及び訴訟の依頼ができます。
弁護士保険を利用するケースとして多くみられる内容の例を以下に4例紹介します。
- パワハラ訴訟への備えに
- 離婚訴訟への備えに
- 交通事故後の訴訟への備えに
- 誹謗中傷訴訟への備えに
弁護士への相談をしたことがない方にとっては、自分は弁護士に相談することなど起こりえないと思っている方も多いかもしれません。
しかし、近隣住民とのトラブルや、職場内でのトラブルが発展して訴訟関連の事案になるケースは、実は少なくありません。
最初から自分とは関係ないと決めてかかるのではなく、保険商品としての補償内容や費用負担をチェックしてみましょう。
そのうえで、自分にとって魅力があると判断できるのであれば、保険付保を検討してみてはいかがでしょうか。
パワハラ訴訟への備えに
企業に勤務している方の中には、パワハラを経験したことがある方もいるかもしれません。
パワハラとは、パワーハラスメントの略称で、会社内の立場を利用して不適切な言動を行い、不快感を与える行為をいいます。
主に、上司の部下に対する態度や接し方が問題になるケースが多いです。
明らかに無理な業務上の課題を与えたり、プライベートの時間に無理やり飲み会などに行くことなどで、当人に不快さが募る場合がパワハラに該当します。
パワハラは、基本的には社内で解決するのが一般的です。
しかし、パワハラを行っている当人だけでなく、会社で隠蔽するようなこともあり、社内だけで解決しないこともあります。
そんな時には訴訟に発展するケースもあり、場合によっては慰謝料として50万円から100万円の請求ができることもあります。
しかし、訴訟を起こすためには弁護士への相談が一般的になり、それに伴って費用が掛かります。
弁護士保険に加入していれば、関連費用の補償が得られるので、弁護士の利用もやりやすくなるでしょう。
職場でのトラブルは、パワハラ以外にも、セクハラやマタハラなど様々存在します。
会社によっては、いざとなったときに会社側が守ってくれないばかりか、問題をもみ消そうとすることも考えられます。
社内のモラルに関する体制が整っていない会社に勤務していると感じる場合は、弁護士保険に加入していれば、いざというときに安心かもしれません。
離婚訴訟への備えに
現在、日本人の夫婦の3割が離婚しているといわれています。
2019年の厚生労働省の人口動態統計の結果によると、一年間の婚姻数がおよそ59万9千件であるのに対し、離婚数はおよそ20万9千件という結果があります。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/index.html )
離婚が多い現状の中、夫婦間で折り合いがついてスムーズに離婚が完了するケースもあれば、逆になかなか夫婦間で納得が得られず、トラブルになるケースも少なくありません。
慰謝料の金額や、子供の親権などでトラブルになるケースが多いです。
夫婦間で折り合いがつかない場合、訴訟に発展するケースがあります。
その時には弁護士に相談をするのが一般的で、プロの視点から様々なアドバイスをしてくれます。
慰謝料や親権において、有利になる条件を揃えてくれたり、申立書類の記載方法においても最良の内容を提案してくれます。
しかし、弁護士に相談や訴訟の依頼をするとまとまった費用が必要になります。
弁護士保険に加入していれば、この費用が補償されます。
離婚を前提にして生活しているという方は少ないと思いますが、もしもの備えとして、弁護士保険は一般的な夫婦においても有用な保険といえます。
交通事故後の訴訟への備えに
自動車の運転中に交通事故を起こしてしまうケースもあるでしょう。
自分自身は安全に運転していても、相手方の責任で事故が起こってしまうケースもあります。
一般的に、交通事故が起こったときは当事者間で話し合い、両者の責任割合を決めて示談を成立させます。
しかし、場合によっては交渉が難航して示談に至らないケースもあります。
そんな時には、解決に向けて訴訟に発展するケースもあり得ます。
交通事故後の訴訟には、一般的には弁護士に相談をすることになります。
弁護士に相談をして、訴訟に関する手続きを行ってもらうことで、一定の費用が発生します。
弁護士関連の費用は、かなり高額になってしまうケースもあります。
事前に弁護士保険を付保していれば、この費用を補償してもらえます。
普段から自家用車などを運転している方には有用な保険といえるかもしれません。
しかし、自動車運転に際し、任意保険に加入している方が大半です。
任意保険の中には、弁護士費用特約が付与されているケースがあります。
交通事故を起因とした訴訟に対する弁護士費用を補償してくれる特約なので、この特約がある場合は、改めて弁護士保険に加入するメリットは低くなります。
誹謗中傷訴訟への備えに
現在は、以前に比べて誹謗中傷を受けるケースが増えてきました。
SNSなどネットサービスの普及は、様々な情報発信や遠方の知人との情報共有などにおいて非常にメリットがあります。
しかし、ネットサービスを活用して、特定の人や団体に対して誹謗中傷ととられる情報発信がしやすくなったという側面もあります。
SNSを介して執拗に特定の人に対して嫌がらせをするケースが増えてきており、問題視されています。
ネットを利用した誹謗中傷は、訴えることで相手方を特定し、損害賠償を請求できることがあります。
しかし、情報発信者の特定や損害賠償請求の手続きは、個人で実行することは難しいので、一般的には弁護士に相談することになります。
弁護士保険を付保していれば、相談や訴訟関連費用を補償してもらえます。
SNS等でのトラブルを受けても安心して相談できる環境を確保しておきたい方には、弁護士保険はおすすめです。
フリーランス・個人事業主向けの弁護士保険プランもあり
弁護士保険は、個人レベルで付保するものだけではありません。
商品によっては、フリーランスで活動する方や、個人事業主の方が利用できる弁護士保険プランも用意されています。
大企業などでは、顧問弁護士の契約を行って、各種相談を受けているケースが多いです。
一方、中小企業や個人事業主などでは、顧問弁護士の契約をするほどの余裕もなく、相談するべき事案も少ないため、特に何も準備していないケースが多いです。
しかし、事業を展開する中で、様々な法律関連のトラブルが起こるものです。
例えば飲食店の場合は、食中毒のトラブルや店舗内での利用者とのトラブルなどが起こりえます。
個人事業主にとって法的トラブルは意外に多いので、弁護士に気軽に相談できる体制を整えられていると安心です。
顧問弁護士の契約には費用が掛かりすぎるので、代わりに弁護士保険を利用するという選択肢があります。
弁護士保険を利用する際には、個人の方限定のプランと、事業用のプランが分割されているケースがあるので、利用する際には得たい補償が含まれているのか、よく確認しましょう。
弁護士保険に加入するメリットとは|4つのメリット紹介
弁護士を利用する機会があまりないため、弁護士保険は有用性が低いと考えている方が多いかもしれません。
しかし、自分には関係ないと思っていても、思わぬトラブルが突然やってきて、弁護士に相談しないと解決しない、といったことも十分起こりえます。
弁護士保険を利用することで、もしもの時の補償が得られるだけでなく、他にもいくつかのメリットがあります。
弁護士保険に加入することのメリットについて、以下に代表例を4項目紹介します。
- 被害者の泣き寝入りを防げる
- トラブルの抑止力がある
- 月額料金はお手軽価格
- 法律トラブルだけではない様々な問題に対応
被害者の泣き寝入りを防げる
弁護士に事案の相談及び手続きの依頼をした場合には、かなりまとまった金額が必要になるケースが多いです。
弁護士事務所によっても、あるいは相談する内容によっても、必要となる資金は千差万別ですが、一般的には、以下のような費用が発生します。
- 相談料:1時間当たり1万円程度
- 着手金:30~40万円程度
- 成功報酬金:経済的利益の10~15%
弁護士に対して相談したい事案があったとしても、費用面の負担が大きいために、そのまま何もせず泣き寝入りした経験がある方も多いかもしれません。
訴訟を起こして慰謝料などをもらえたとしても、そこに至るまでに弁護士費用をかなりの規模で支払わないといけません。
高額の弁護士費用を負担するくらいなら、わざわざ訴訟を起こす必要はない、と結論付けてしまう方もいるかもしれません。
弁護士保険に入ることで、資金面における心配を大幅に軽減できます。
弁護士費用への補償があるため、気兼ねなしに弁護士に相談できる環境になります。
トラブルの抑止力がある
弁護士保険に加入すること自体が、法的なトラブル発生の抑止力として機能するという側面があります。
各種交渉をする中で、相手方に弁護士の用意があるということが事前に判明しているのであれば、無理な交渉はさけた方が無難だと判断されることもあるでしょう。
弁護士保険に加入していることが一目瞭然になるのが、リーガルカード及びリーガルステッカーです。
弁護士保険商品の中には、保険に加入することで、リーガルカードやリーガルステッカーを発行するところがあります。
保険会社が発行する専用カードおよびステッカーで、これを持つ人は、すぐに弁護士に相談できる用意があることの証明になります。
カードは交渉の場面で相手に見せるなど、効果的な使い方が可能です。
ステッカーは、例えば自動車の背面に貼ることによって、後ろで追走する運転手にしっかりと見えます。
弁護士の保護がある相手なので、あおり運転はやめておくべきだ、といった判断につながることも考えられます。
できることなら、法的な訴訟関連の事象に関わりたくないと考えるのは誰しも同じでしょう。
弁護士保険に加入することで、法的トラブルを未然に防止する効果が得られるというのは、大きなメリットといえます。
月額料金はお手軽価格
弁護士保険は、比較的お手頃な保険料で加入できる商品が多く提供されています。
保険料は、もちろん補償内容によって違いがありますが、非常に安価な保険料で利用が可能になっています。
保険の代表例ともいえる生命保険を利用する場合、一般的な補償内容の場合でも月額保険料が1万円を超えるケースは少なくありません。
一方、弁護士保険の保険料は、月額数千円程度で済みます。
商品や補償内容によっては、月額にしてほんの500円程度で加入ができる商品もあります。
負担感が少なく気軽に加入できる料金水準なので、安心を得るため、あるいはお守り代わりに利用しているという方もいます。
弁護士保険を利用する際には、補償の内容や使いやすさなどを考えることはもちろんのこと、保険料の安さについてもチェックして比較してみてください。
等級制度でさらに安くなる可能性がある
弁護士保険の商品の中には、保険料等級制度が適用されているものもあります。
保険料等級制度とは、保険求償の利用頻度や補償に利用した金額に応じて、等級が上下する仕組みのことを指します。
基本的に、保険求償の手続きが多ければ多いほど、あるいは保険金として受領した金額が大きければ大きいほど、等級は不利になっていき、保険料が高くなっていきます。
逆に、保険求償の事例がなく、保険による補償を利用しなかった場合は、等級が有利になっていき、保険料が安くなっていく傾向にあります。
弁護士保険を利用しなければ、それだけ保険料負担も安くなっていきます。
もともと安い値段の保険料がさらに安くなるので、負担感はどんどん軽減されていきます。
保険商品を選択する場合は、保険料等級制度が採用されているかをチェックすることもおすすめです。
長期間補償を得つつ、保険料負担を軽減したいと思っている方は、補償の中身に加えて、保険料等級制度が採用されているのか、しっかりとチェックしてください。
法律トラブルだけではない様々な問題に対応
弁護士に相談をする案件というのは、法律に関連するトラブルだけではありません。
弁護士への相談といえば、交通事故の示談が不成立になるときや、離婚訴訟におけるトラブルなどを連想する方が多いかもしれませんが、実は身近なトラブルでも相談する機会は存在します。
例えば、近隣住民とのトラブルなども、弁護士が取り扱う事案となるケースがあります。
近隣住民とのトラブルは、いつ起こっても不思議ではありません。
お互いの主張が平行線をたどり、一向に解決に行きつかないケースも十分にあり得ます。
そんな時には中立の立場としてのアドバイザーとして弁護士に立ってもらって仲裁をお願いすることもあるでしょう。
弁護士保険に加入して数日で近隣トラブルが発生し、さっそく補償を活用できたという事例もあります。
弁護士に相談する事案は、意外に身近にあります。
そのため、弁護士保険を活用することになるケースが突如として起こることもあるので、保険に加入することで安心が得られることは間違いありません。
得意分野に特化した弁護士保険もある
弁護士保険と一言で言っても、補償範囲の設定は様々あります。
特定の分野に特化して、補償を手厚くしている弁護士保険も中にはあります。
そのため、弁護士保険を選択する際には、自分が補償を得たい部分に特に手厚い商品を選択するというのも一つの考え方といえるでしょう。
特定分野に特化することで、他の部分を補償せず、伴って保険料を安く設定しているものもあります。
月額数百円の弁護士保険も中にはあり、特定の分野のみを補償するタイプの商品もあります。
例えば、痴漢冤罪や痴漢被害のみに特化している保険は、普段から満員電車を利用するケースが多い会社員にとってはメリットのある保険といえるでしょう。
自分に合った保険選びをする際には、様々な種類の保険商品を比較することが重要です。
弁護士保険の付帯サービスが活用できる
弁護士保険に加入すると、弁護士費用の補償が得られる以外にも、様々な付帯サービスが利用できます。
付帯サービスの内容は、弁護士保険によって違いがあるので、保険契約内容に加えて、事前にチェックしておきましょう。
弁護士保険の付帯サービスの例として、以下に3種類紹介します。
- 電話による無料相談サービス
- 弁護士紹介サービス
- 法律関連以外の相談に対応
電話による無料相談サービス
信頼できる弁護士に直接電話をして相談できるサービスがあります。
法的トラブルの悩みに無料で相談できるサービスなので、気軽になんでも質問ができます。
悩んでいることが訴訟に発展する前に、解決につながる方法をアドバイスしてくれるかもしれません。
弁護士紹介サービス
保険会社に依頼をすることで、住まいの近くにいる弁護士を紹介してくれるサービスです。
いずれも実績があり信頼して相談できる弁護士を紹介してくれるので、自分で弁護士を探す手間が省けます。
相談したい分野に強い弁護士を紹介してくれるサービスもあるので、自分で探すよりも適切な弁護士と話ができるかもしれません。
法律関連以外の相談に対応
弁護士保険に加入することで、法律トラブル関連以外の相談に応じてくれるサービスが利用できるケースもあります。
労務関連や近隣トラブルなど、法的トラブルに発展していないものの、不安に思っていることなどを気軽に話せるので、精神的な安定を得るのにも役立ちます。
弁護士保険の特約にも注目しよう
弁護士保険には、メインの契約補償だけでなく、特約が充実している商品もあります。
保険契約をすることで、そのまま付与されている特約もあれば、保険料を上乗せして得られる別途の有料タイプの特約もあります。
弁護士保険の商品を選択する際には、メインとなる基本補償内容に加えて、特約の内容もしっかりとチェックするようにしましょう。
弁護士保険の特約には様々なものが商品ごとに設定されていますが、その中でも多く見られる代表的な内容を以下に4種類紹介します。
- 法律相談料保険金不担保特約
- 免責金額ゼロ特約
- 道路交通事故不担保特約
- ファミリー特約
法律相談料保険金不担保特約
法律相談料保険金不担保特約とは、弁護士に対する法律関連の相談料負担に対する補償をなくす特約のことです。
交通事故や離婚調停など、法律関連のトラブルが起こったときには、まずは弁護士に相談するのが一般的です。
法律関連の相談には、相談料が発生するのが普通で、法律相談料の負担が発生するのが通例です。
しかし、状況によっては、相談をすることなくすぐに法的手続きの依頼をするケースもあるでしょう。
あるいは、法律トラブルに関する事前知識がある方や、訴訟関連の経験を持っている方にとっては、最初の法律相談が不要であると考える方もいるかもしれません。
そのような法律相談が不要と感じている方におすすめなのが、法律相談料保険金不担保特約です。
法律相談料に対する補償がなくなるため、法律相談料の負担に対しては保険金が受け取れません。
しかし、その分毎月の保険料負担を軽減できます。
法律相談料は、自己負担でもいいから保険料を安くしたい方や、法律相談をする予定がない方などにおすすめの特約となります。
免責金額ゼロ特約
免責金額ゼロ特約とは、保険契約で多く見られる、免責金額の設定をゼロにする特約になります。
弁護士保険で適用されることが多い免責設定としては、着手金の負担に対する補償が挙げられます。
例えば、着手金の補償に対して免責金額が5万円設定されているとします。
この場合、仮に着手金が30万円発生したとすると、弁護士保険で受け取れる保険金の金額は25万円になります。(30-5=25万円)
免責金額ゼロ特約を付与すると、その分保険料が高くなってしまうというデメリットがありますが、保険金として得られる補償が手厚いということになります。
保険料が多少高くなっても、得られる保険金を多くして補償を手厚くしておきたいと考える方におすすめの特約となります。
道路交通事故不担保特約
道路交通事故不担保特約とは、道路交通事故の際に発生する弁護士関連費用への補償をなくし、不担保にする特約になります。
弁護士保険には、一般的に道路交通事故に対する補償が付与されているケースが多いです。
道路交通事故不担保特約を適用すると、道路交通事故に対する補償はなくなりますが、その分毎月の保険料が減額されることにつながります。
弁護士保険を利用する際には、交通事故に対する補償は是非ほしいと考える方も多いかもしれません。
しかし、自動車保険の任意保険の中には、弁護士費用を補償する特約が付与されているケースが多くあります。
もし、弁護士保険で交通事故に対する補償を得たものの、すでに自動車の任意保険で同様の補償が得られていたとしたら、補償が重複してしまい不経済な契約といえます。
弁護士保険を付保する前に、自身の自動車任意保険の契約内容や特約の内容をチェックして、すでに弁護士費用の補償が得られているのであれば、弁護士保険を利用する際には道路交通事故不担保特約を適用して保険料負担を軽減することをおすすめします。
ファミリー特約
ファミリー特約とは、弁護士保険を契約した本人だけでなく、一定の範囲の家族にまで補償の範囲を広げられる特約となります。
家族として認定される範囲は、保険会社や保険商品によって違いますが、一般的には契約者の配偶者と30歳未満の未婚の子供と設定されているケースが多くみられます。
配偶者1名まで、子供は一度結婚して離婚した場合は適用外、など細かい条件設定がされているケースが多いので、あらかじめ理解しておきましょう。
また、家族にも適用される補償内容も、保険商品や保険会社によって違いがあります。
家族にまで補償範囲を広げたい場合は、商品ごとの特約の条件をしっかりとチェックして、希望通りの補償が得られているかを確認しておきましょう。
弁護士保険を利用することが多いケースを紹介
弁護士保険は、意外に利用する機会が多いことを紹介してきました。
しかし、どんなケースで活用できる保険なのか、具体的によく分からないという方も多いかもしれません。
弁護士に相談するケースがどんな場合なのか理解をしておくことで、弁護士保険を活用できる場面をイメージしやすくなります。
弁護士保険の商品を比較し選択する場合にも、自分に必要な補償がどんな分野であるのか、考えやすくなるので、弁護士に相談するケースを想定しておくことには一定のメリットがあります。
弁護士に相談及び依頼をして、弁護士保険が適用されることが多い事例を、大きく2つに分けて以下に紹介します。
- 偶発事故
- 一般事件
偶発事故|偶然起きた不慮の事故
偶発事故とは、予想をしていない状態で起こった偶然的な事故のことを指します。
身体への障害や、私財の破損が、外部からの予期できない突発的な要因により被ってしまうことを指します。
不慮の事故や交通事故などが該当します。
偶発事故で発生した弁護士関連の費用は、ほとんどの弁護士保険が補償の対象としており、補償限度額も高くなっている傾向にあります。
そのため、偶発事故に分類できる法的トラブルの場合、保険に入っていれば大きな補償が得られることになります。
しかし、偶発事故と思っていたものが実は違っていることが結構あります。
偶発事故と思い込み、勘違いをしているケースも少なくありません。
例えば、病院で治療を受けた際に、逆に症状が悪化したり障害が発生してしまうケースなどは、突発的な事故と考えられ、偶発事故に含まれると思いがちです。
しかし、このケースは偶発事故には含まれず、後に紹介する一般事件に該当することになります。
偶発事故かそうでないか、自分で判断するのが難しいケースもあります。
例えば、交通事故で相手方と示談が成立したものの、実は後遺症が残る事故であったために、本来はもっと高額の損害賠償金を請求できていたということがあります。
自分の判断だけで示談交渉に臨むのではなく、弁護士に相談することで正当な示談に持ち込める可能性が高くなります。
法的トラブルは偶発事故か、そうでないか、など判断が難しいケースが多いので、弁護士保険に加入してすぐに弁護士に相談できる体制を作っておくと安心です。
一般事件|偶発事故以外の法的トラブル
一方、一般事件とは、偶発事故以外の法的トラブル全般を指します。
突発的な事件や事故以外は、すべて一般事件に分類されます。
多くの弁護士保険では、偶発事故にかかる弁護士費用については保険金上限が高額に設定されていたり、実際に発生した費用を全額補償してくれるタイプが多いです。
一方、一般事件においては弁護士費用の全額が補償されるのではなく、その一部が補償されたり、契約から一定期間が経過しないと補償されない、などの不利なルールが課せられています。
また、弁護士保険の種類によっては、一般事件の中でも一部の事象しか補償していないタイプの商品もあります。
一般事件に対する弁護士保険の補償内容は、商品によってかなり違いがあるので、よく比較をして誤解のないように注意しましょう。
偶発事故と一般事件の事例について、以下に列記するので参考にしてください。
偶発事故に分類される事件
- 自動車事故に被害者・加害者
- 突発的な事故による人身被害、物損被害
- 火災・爆発事故
- マンション・アパートの上階からの水漏れによる被害
- スポーツなどでの接触事故
- 自転車事故
一般事件に分類される事件
- 欠陥住宅を提供されたケース
- 近隣住民とのトラブル
- 遺産相続における遺族内でのトラブル
- 離婚問題
- リストラなど雇用・労働関連のトラブル
- パワハラ・セクハラなどのトラブル
- 各種いじめ
- 医療過誤
- 金融商品取り扱い上の問題
- SNSを利用した誹謗中傷などなどネット上でのトラブル
一見身近なトラブルであったとしても、当事者間で解決できなければ、法的なトラブルに発展するケースはあり得ます。
弁護士保険が適用される事例は意外に多いので、加入していると一定の安心を得られるのはメリットといえるでしょう。
誤解しがちな弁護士保険対応外のケース
もしもの時のために弁護士保険に加入したものの、いざ保険金を請求する段階になって、補償の対象外であるというケースが結構あります。
自身では保険金求償の対象であると思っていても、誤解であったという事例は意外に多いです。
実際に弁護士関連の費用が発生しても、保険金求償の対応外である事例をしっかりと理解して、後悔しないようにしましょう。
弁護士費用のうち、保険対応の範疇外であると誤解されやすい事例を以下に5項目紹介します。
- 対象外の法律事件
- 契約前から発生しているトラブル
- 被保険者以外の方のトラブル
- 個人向け保険の場合における法人のトラブル
- 待機期間・不担保期間
対象外の法律事件|国相手の訴訟等
弁護士に依頼したすべての法律事件が、弁護士保険に対象になるというわけではありません。
一定の法律事件では、弁護士保険の対象外になるという規定があります。
主に、以下のような法律事件は、どの保険会社の弁護士保険でも補償の対象外になっています。
- 国や地方公共団体、行政庁などが相手の法律事件
- 破産、⺠事再⽣、特定調停、任意整理に関する法律事件
- 刑事事件、少年事件、医療観察事件
弁護士保険に加入する前に、補償の対象外になる法律事件とはどんなものか、一通り見ておきましょう。
保険契約時の約款などに記載されているので、契約前の確認が可能です。
契約前から発生しているトラブル
本来なら弁護士保険の補償対象となる法律トラブルでも、補償対象から除外されてしまうケースはいくつかあります。
その代表例として、契約前からすでにトラブルが発生していた場合が挙げられます。
法律事件に発展することがあらかじめ予見されていた状態で弁護士保険に加入し、保険金の受給が認められてしまうと、実質的には数千円で数十万円の弁護士費用が確実に保証されることになってしまいます。
該当のトラブルがいつから発生したかを認定するのは判断が難しいところですが、判定は保険会社が厳正かつ公平な判断で実施します。
弁護士保険は、トラブルが予見される状況で加入しても遅いと理解しておきましょう。
以下で説明する待機期間や不担保期間も影響し、早めに加入しておかないといざという時に使えないという事態になってしまうのは、加入前にしっかりと理解しておきましょう。
被保険者以外の方のトラブル
弁護士保険は、特約など特別な内容がなければ、契約者本人が関わる弁護士費用しか補償されません。
例えば、契約者の配偶者が会社での労働関連のトラブルを経験し、訴訟に発展した場合は、弁護士費用を保険で求償することは不可能です。
家族全員を補償の対象にしたい場合は、前述のファミリー特約が付いているタイプの弁護士保険を選択するか、もともと主契約に家族全員を補償するタイプの商品を選択する必要があります。
範囲の広い保険商品を選択すればするほど、あるいは補償範囲を広げる特約を付加すればするほど、月額の保険料負担が大きくなってしまいます。
補償内容と、負担する保険料のバランスを考慮して、自分及び家族に合ったぴったりの内容の保険を選択することが肝要です。
個人向け保険の場合における法人のトラブル
弁護士保険は、個人向けの商品と、法人及び個人事業主向けの商品とで明確に区分されています。
このため、個人向け弁護士保険商品に加入した個人事業主が、事業上でのトラブルに見舞われ、弁護士費用を負担することになったとしても、加入している弁護士保険で費用が補償されることはありません。
個人向け弁護士保険を、個人事業主の方が加入する場合、個人の生活上での法的トラブルなのか、事業上での法的トラブルなのか、判断が難しいケースも少なくありません。
しかし、加入する保険商品の保険会社の判断によって、個人のトラブルなのか事業上のトラブルなのかが判断されてしまいます。
保険の補償範囲に該当しないと判断された場合、保険に加入していても保険金を受給されなくなるので注意しましょう。
企業に勤務する従業員側の立場では、事業上でのセクハラやパワハラでのトラブルにおける弁護士費用については、個人向け保険の補償範囲となります。
個人事業主や中小企業の経営者で、事業上での法的トラブルが発生しやすい業種の場合は、事業者用の弁護士保険の加入を検討することをおすすめします。
飲食店や、リラクゼーションサービスなど、直接顧客と接する機会が多い業態の場合は、特にトラブルに見舞われやすいので、事業用の弁護士保険に加入しているといざという時に安心です。
待機期間・不担保期間
弁護士保険には、待機期間及び不担保期間という設定があります。
その期間の設定は保険会社及び保険商品によって違いがありますが、弁護士保険には多かれ少なかれこれらの設定がされているのが一般的です。
待機期間とは、弁護士保険の契約締結から、すべての一般事件に対する弁護士費用の補償が受けられない期間のことを指します。
不担保期間とは、待機期間と同様、契約締結から一定期間設けられている補償対象外の期間で、一般事件の内容によって様々な期間の設定がされています。
待機期間及び不担保期間は、一般事件にのみ適用される補償対象外期間になります。
前述の偶発事故については、保険契約締結直後から補償が始まるので、安心です。
弁護士保険を利用する際には、一般事件に対する待機期間及び不担保期間がどのように設定されているのか、必ず確認しましょう。
例えば、待機期間が3ヶ月の設定がされている弁護士保険商品を契約した場合、契約締結から2ヶ月後に発生した一般事件の弁護士費用は補償されません。
また、離婚問題に対して1年間の不担保期間が設けられている弁護士保険に加入した場合、契約締結から10ヶ月後に発生した離婚関連の弁護士費用については、補償されることがありません。
保険契約締結前に、あらかじめどんな分野の一般事件が発生するのかの予想は実質的に無理なので、判断が難しいところです。
しかし、重視したい事件がもしあるのであれば、その一般事件の分野に対して不担保期間が短い保険を選ぶというのも重要な考え方になります。
弁護士保険に加入条件はある?|基本的に誰でも利用可能
弁護士保険への加入条件は、保険会社及び保険商品によって多少の違いはあるものの、ほぼ同様の条件が設定されています。
弁護士保険に加入できる要件として、以下のような内容を設定している商品が一般的です。
- 契約開始日において18歳以上であること
- 日本国内に住んでいること
- 約款や重要事項、その他申込書類の内容を正しく理解できること
- クレジットカード、または銀行口座を保有していること
- 反社会的勢力に所属していないこと
以上のように、社会人にとってそれほど難しい要件は無いため、社会人であれば実質的に誰でも加入することが可能といえます。
社会人として生活する中では、様々な法的トラブルに巻き込まれる可能性が出てきます。
就職する、家族を持つ、自家用車を保有して運転する、自分の家を持つ、子供ができるなど、様々な生活スタイルの変化を経験すればするほど、更に法的トラブルを経験する危険が増してきます。
弁護士保険は、生命保険などと比較すると、保険料の負担が少なくて済みます。
社会人になったら、もしもの時に備えて、保険への加入を検討するのも一つの考え方です。
弁護士保険を選択する際の注意点|3つのポイント
弁護士保険は、もしもの時に備えられる保険ではありますが、加入する際には、本当に自分及び家族にとって有用な内容なのかを考える必要があります。
弁護士保険と一言で言っても、商品によって特徴や得意分野、補償内容に差があるので、契約してから後悔することのないように内容をしっかりと理解しましょう。
弁護士保険を選択する際の注意点として、主要なものを以下に3項目紹介します。
- 自分に必要な補償かどうか判断する
- 補償内容と保険料は手頃であるか
- トラブル発生時の保険金を確認
自分に必要な補償かどうか判断する
まずは、自分に必要な補償を得られる保険商品かどうか、判断する必要があります。
主にチェックするポイントは、以下の3つになります。
- 補償したい内容は、個人のトラブルか、事業上のトラブルか
- 一般事件をどの程度補償したいか
- すでに発生しているトラブルに備える保険加入ではないか
弁護士保険は、個人向けと事業者向けと別々に用意されています。
どちらの補償を受けたいのか明確にして、利用する保険を決めましょう。
また、一般事件に対する補償を考えることは非常に重要です。
法的トラブルの多くが一般事件に関することです。
一般事件に対する補償範囲をチェックするだけでなく、待期期間や不担保期間がどの程度設定されているのかも、よく理解しておきましょう。
さらに、すでにトラブルが発生している事案に対して補償を得たいと考えている場合は、弁護士保険の補償範囲外となるので、保険に加入しても意味がありません。
補償内容と保険料は手頃であるか
弁護士保険に限らず、保険商品は補償を手厚く広範囲にすればするほど、保険料の負担が大きくなっていきます。
安心を得たいがために、補償を多くしすぎると、保険料負担が大きくなりすぎてしまいます。
毎月の保険料が手ごろな値段で収まっているか、考えてから契約を実行しましょう。
弁護士保険は、数百円から加入が可能です。
他の保険商品に比べて保険料が高すぎると感じる場合は、一度冷静になって他の商品と補償内容や保険料を比較してみましょう。
弁護士に支払う費用の代表例
弁護士に支払う費用項目としては、以下のようなものが一般的です。
- 法律相談料:事件を委任する前に発生
- 着手金:事件を委任するときに手付として支払う
- 報酬金:事件終了時に成功不成功の結果に応じて支払う
- 手数料:単発の事務処理や内容証明郵便などの費用
- 日当:遠方での裁判に出席してもらうなど、弁護士を拘束する際に発生
保険商品によって、以上5種類の費用すべてを補償してくれるものもあれば、逆に一部の費用項目を対象外にしているものもあります。
例えば、法律相談料を対象外にして、それ以外を補償するタイプの商品もあります。
特約を付与して、保険料を安くする代わりに、一部の費用項目の補償をなくす対応をしているものもあります。
かなり細かい設定ができるので、保険料と補償内容をバランスよく組み立てましょう。
トラブル発生時の保険金を確認
実際に法的トラブルが発生し、弁護士費用の負担をしたとして、どれほどの金額の保険金がもらえるのか、あらかじめ試算しておきましょう。
弁護士保険で受け取れる保険金は、法律相談をしたときの「法律相談料保険金」と、法的トラブルへの対処をしてもらったときの「法務費用保険金」の2種類に大別されます。
保険の契約をする際に、受け取れる保険金の計算式が明示されていない商品は、信頼できません。
多くの方が、弁護士保険に加入すれば法的トラブル解決にかかった弁護士費用全額が補償されると勘違いしています。
しかし、実際は全額補償されるケースの方が少ないと考えておくべきです。
保険商品の内容によっては、全額の負担を補償してくれるような契約にできるものもありますが、その場合は保険料がかなり高くなる可能性が高いです。
費用項目によって補償される割合が異なる保険商品が多いので、あらかじめ保険金の試算をしてもらい、納得したうえで契約するようにしましょう。
保険金算出における重要な要素|免責とてん補割合
受け取る保険金を算出する際に重要になる要素として、「免責」と「てん補割合」の2つがあります。
免責とは、前述のように、損害が発生した際に保険会社が保険金支払いの責任を負わない金額設定のことです。
免責部分が大きければ大きいほど、月額保険料は安くなりますが、実際の受取保険金を直接減額する結果となります。
てん補割合とは、実際の損害額から免責金額を控除した後、保険金として受給される金額の割合のことを指します。
てん補割合が大きければ大きいほど受け取れる保険金額が大きくなります。
以下に保険金の計算式を例示するので参考にしてください。
発生した着手金 | 免責の設定 | てん補割合設定 | 計算式 | 受取保険金 |
---|---|---|---|---|
60万円 | 5万円 | 80% | (60-5)×80% | 44万円 |
結果として、実際に発生した費用である60万円に対し、受け取れるのは44万円となります。
免責金額及びてん補割合は、保険商品や保険会社により異なるだけでなく、同じ保険商品の中でも弁護士費用の項目ごとに設定されているケースが多いので、契約前に細かく確認しておきましょう。
まとめ|安心を得られる弁護士保険を検討しよう
以上、弁護士保険について解説をしてきました。
多くの方が思っている以上に、弁護士に依頼をするような法的トラブルが発生する可能性は高いです。
もしもの時に備え、弁護士保険に加入することには一定のメリットがあります。
訴訟をあきらめなくて済むことや、相手方との交渉の際に抑止力となるなど、メリットが多い保険商品です。
しかし、保険契約をする際には、様々なポイントを考慮する必要があります。
個人向けか事業者向けか、保険料と補償内容は適切かつバランスの良い構成になっているか、自動車任意保険の補償内容など、他の補償と重複していないか、など考慮する要素は多岐にわたります。
商品に関する評価をチェックしたうえで、保険会社などとよく相談をして、自分に合った弁護士保険への加入をしましょう。